ラオスのチムチュム タイのチムチュム 似て非なる南国の鍋料理
タイ料理として人気があるタイスキは中国系タイ人がクーラーのガンガン効いた店内で火鍋を出したのが始まり(Cocaのことである)と言われるが、実際の原型はイサーン地方の鍋料理チムチュムではないだろうか?
そのイサーン地方と食文化的基盤や言語もほぼ同じくするラオスにもチムチュムがある。
というかチムチュム発祥の地はラオスである。
しかしながらフランスの植民地だった影響もあるのか知らないが、スープに対する考え方が全く違っているようだった。
タイのチムチュムは豚あるいは鶏ガラで取った薄いスープにレモングラス、コブミカンの葉、ナンキョウなどのハーブ類を入れ強い香りをつける。
タイ人のチムチュムの食べ方を見ているとスープにこだわりはなく、ほとんど無視しているようにも見える。
"スープが美味しいね" などというセリフは未だかつてタイ人の口からは聞いたことがない。
しょっぱいだけで味が全く無いスープの店も結構多い。
ちなみにパヤータイ通りのChaloemla 56 Bridgeのたもとに出ている屋台のチムチュムのスープは珍しく美味しかったので店の人に「スープ美味しいですね」と言ったら「ああそうですか」というどうでもいいような返事が返ってきた。
少し前の話である。
ラオスの首都ビエンチャンのバックパッカーが集まるファーグム通りを夕暮れ時に歩いていると、通りの外れの空き地に、チムチュムの屋台が出ていた。
地べたにゴザを敷いて、ちゃぶ台みたいな小さなテーブルで座布団に座って食べるスタイルだ。
外国人が多く集まる場所にもかかわらず、主に地元の人と思しきラオス人で賑わっていてほぼ満席である。
美味しいに違いない。
順番を待って着席する。
店の若い従業員は外国人だからといって気後れすることもなく、すばやく席に来てテキパキと注文をとっていく。
そして鍋の具は鶏、豚、牛の肉の他にも牛の乳房や腎臓などがあったりする。
とにかくスープがうまい。
客席からちょと離れた場所で大きな鍋で大量のスープを沸騰させないようにコトコト煮ている。
帰り際に店の大将に、スープがタイのチムチュムと違っているけどどうやって作っているのと尋ねてみた。
鶏ガラやキノコで取ったスープにココナツのジュースをたっぷりと加える。
(ココナツミルクではなくココナツの中に入っている半透明の水)
タイみたいに香りの強いハーブは入れない。
なぜならばスープの風味が台無しになってしまうからだそうだ。
"スープがタイと違う"
がツボに入ったのか、大将は嬉しそうに事細かに作り方をおしえてくれた。スープにはかなりこだわっているようだった。
今はその空き地には新しくビルが建っている。
あの屋台はどこにいったのだろうか。