After living in Thailand

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タイの【テラピア】と明仁上皇陛下

京都新聞記事からの抜粋である。


2007年、天皇陛下大津市で開かれた「全国豊かな海づくり大会」の式典で驚きの発言をされた。

 

ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰りました」

 

「当初、食用魚としての期待が大きく、養殖が開始されましたが、今、このような結果になったことに心を痛めています」

 

京都新聞4月26日

 

ブルーギルの異常繁殖に対する上皇陛下の謝罪のお言葉である。

 


インドシナ半島テラピアが一般的に食べられるようになったのはごく最近のことである。

 

1960年代頃タイ国は、主に農村地域の動物性蛋白源の不足を補うため、いろいろな淡水魚の養殖を試していたがなかなかうまくいかなかった。

 

そのことを当時のプミポン国王が魚類学者でもある当時皇太子であった明仁上皇に相談された。


この魚であればうまく繁殖するのではないかということで明仁上皇から50匹のテラピアの稚魚がタイに贈られた。


そのテラピアは最初に王宮内の池で育てられ、やがてタイ全土にひろめられていった。


現在では他国に輸出されるまでの産業となっている。


それがタイにおけるテラピアのルーツである。


日本のように在来種を駆逐してしまう迷惑な魚という意識はタイ人にはない。

 

テラピアタイ語で「プラーニン」と呼ばれる。「プラー」が魚の意で、「ニン」は宝石の碧玉のことであるが、上皇陛下のお名前「明仁」の「仁」からつけられたと言う説もある。


この話を知るタイ人は思いの外多い。


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タイ前国王はこのありがたい魚を明仁上皇の分身と考え、決して食べなかったそうである。


ん? 食べないの?


この辺の感覚は日本人にはちょっとよくわからないが。

 

テラピアの原産地はアフリカから中近東あたりで非常に繁殖力が強い魚だ。


日本にも戦後の食糧難の時期に蛋白源の確保のために移植され、養殖されていた。


「いずみ鯛」の名で市場にも出ていたが、豊かになった日本人は魚に対するこだわりもあってか、後に見向きもしなくなる。


今となっては自然繁殖したテラピアは生態系被害防止外来種に指定されている。

 


タイ農村部では元々ライギョナマズが食べられていたが、環境の変化によって数は減少していった。


タイでは淡水魚の中ではライギョが最もご馳走で値段も高い。


実際、きれいな環境で育ったライギョは姿形からはとても想像できないほど上品な身質と味である。内臓の脂肪も甘みがあって美味だ。


しかしながら汚染された生息環境を知る地方出身者の中には田舎のライギョなんか絶対に食べないという人もいる。


環境を管理されて育った養殖物のテラピアが一般化していったのはそういった事情もあるのかもしれない。